夢のような外壁塗料
近年、外壁塗装の材料において耐候性(一般的に“何年持つの?”といわれている事です)が15年、20年というような夢のような材料が市場に出回っています。
光触媒、フッ素、ピュアアクリルなど弊社でも取り扱っていますし施工実績もあります。
施工後1年ほどしてお客様宅へメンテナンスにお伺いしますとさすが高耐候、高機能をうたっている材料だけあって塗り替えした当時と変わらない姿です。
多くの塗装専門店といわれている会社さんがこぞって高耐候、高機能な材料をホームページなどで取り上げています。弊社も施工実績やブログなどでお客様に告知をしています。
私が親方付きの職人だった頃、外壁の塗り替えといえば『単層弾性塗料』が主流でした。塗り替えた時はピカピカですが、2~3年すると汚れてみすぼらしくなってしまいます。
持ちは20年、汚れも付かなくいつまでもキレイな壁!
これが今現実のものとして存在します。
もう一つの主役
もう少し目線を上に上げてください。
いやいや、画面のことではなくご自宅の外装です。
そう、もう一つの主役、『屋根』があります。
屋根の目的は非常に重要です。
雨や雪、風や太陽光などを防いでくれます。この機能が失われると雨漏りなどが発生、建物や家財に重大な損害がおよびます。
瓦やトタン、窯業系と材質も性質も様々です。もちろんその他にもありますが、住宅に使われる一般的なものとして上げさせていただきました。
瓦にもいくつか種類がありますが、日本瓦ですとほぼメンテナンスフリーといわれています。とはいっても漆喰部分など定期的にメンテナンスは必要です。
トタンは塗り替えが必要なタイプとガルバリウム鋼板と言われている長期間塗り替え不要なタイプとわかれます。
窯業系は『カラーベスト』、『コロニアル』などと呼ばれているもので一般住宅に広く普及しています。これは塗り替えメンテナンスが必要です。
屋根にも夢の塗料を?
私は常々、屋根(ここでは窯業系屋根材『カラーベスト』『コロニアル』の塗り替え塗料に絞らせていただきます)も外壁と同じような20年持つ塗料はないのかな?といろいろなメーカーさんに問い合わせ探してきました。
しかし、答えはノーでした。
『外壁と違い、屋根は直接太陽光や雨にさらされて非常に条件が悪いです』とのこと、窯業系屋根材の構造も起因している部分もあるとの見解です。
付け加えて
『外壁塗料で20年持つといわれている材料でも屋根ではせいぜい15、6年でしょう』との見解でした。
耐候性では一番のフッ素樹脂塗料を使っても20年持たせるのは無理なんです。
メンテナンスサイクル
ここで大きな矛盾が生まれました。
壁は20年持ちます。でも屋根は塗料寿命14~15年、頑張っても16年程度しか持ちません。
屋根勾配が緩やかな屋根の場合はもっと寿命が短くなります。
この矛盾を考慮に入れ、外壁と屋根のメンテナンスコストを長期的に試算すると、多くのケースで外壁に耐候性20年の塗料を塗るより耐候性15年の塗料を塗った方が割安になることが分かります。
メンテナンスサイクルとトータルコスト
下の表はある建物のメンテナンスコストを試算した表です。
高耐候性塗料(およそ20年) | 経過年数 | 耐候性およそ14~15年の塗料 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
足場 | 外壁塗装 | 屋根塗装 | 計 | 新築から | 足場 | 外壁塗装 | 屋根塗装 | 計 |
10年 | ||||||||
20 万 |
100 万 |
30 万 |
150 万 |
15年 | 20 万 |
70 万 |
30 万 |
120 万 |
20年 | ||||||||
25年 | ||||||||
20万 | 葺替え100万 | 120 万 |
30年 | 20 万 |
70 万 |
葺替え100 万 |
190 万 |
|
20 万 |
100 万 |
120 万 |
35年 | |||||
40年 | ||||||||
20 万 |
30 万 |
50 万 |
45年 | 20 万 |
70 万 |
30 万 |
120 万 |
|
50年 | ||||||||
20 万 |
100 万 |
120 万 |
55年 | |||||
20 万 |
葺替え100万 | 120 万 |
60年 | 20 万 |
70 万 |
葺替え100万 | 120 万 |
|
合計 | 680万 | 合計 | 620万 |
上の表はあくまで耐候性と屋根の寿命(コロニアルなどは30年に1回の葺替え)を単純に表にした物です。
築30年の段階では
高耐候性塗料で270万円
耐候性14~15年の塗料では310万
と高耐候性塗料の方がコストパフォーマンスは高いですが、
築35年では逆転してしまいます。
高耐候性塗料を使用した場合のメンテナンスコストの合計は 680万円
耐候性14~15年の塗料を使用したメンテナンスコストの合計は 620万円
その差は60万円ほどですが、圧倒的に違うのは仮設足場の費用ですね。
高耐候性塗料は新築から60年の間に6回、合計120万円
耐候性14~15年の塗料を使用した場合は4回、合計80万円
その差が40万円となります。
こちらの記事『仮設足場とメンテナンスサイクルについて』にも記載しておりますが、
足場はあくまで仮設材であってお客様の財産になりません。
命を守る、しっかり施工する、近隣住民の方に迷惑をかけない
という大切で絶対に必要なものですが、お客様の財産になりません。
架けなくてもすむ足場を2回も多く架ける。
トータルコストとあわせると100万円近いお金が余計にかかってしまうことになります。
もちろん、例外もあります。
★陸屋根(屋上形式)になっていてそのメンテナンスに足場が必要でない場合
★お客様から塗料の指定があった場合
などです。
実際、弊社の施工例で、光触媒、フッ素塗料などを使ったお客様は屋根のメンテナンスに足場がいらないお宅ばかりです。
繰り返しますが、上の表はあくまで耐候性と屋根の寿命(コロニアルなどは30年に1回の葺替え)を単純に表にした物です。
高耐候性塗料はいけない、意味はないと言っているのではなく、あくまで一つの考え方、物事のとらえ方としてご参考にしていただければと思います。
プロとして
私たちは外壁塗装、外壁リフォームのプロとして美観を保つ、意匠性を持たせることはもちろん、一番大事な『建物を長持ちさせる』ということを常に考えています。
一生に1回あるかないかの大きな買い物、家族が集う大切な場所、お客様の大切な資産のメンテナンス。
メンテナンスにはコストが発生します。そのコストに見合った最大級のメンテナンス、30年、60年と長期のメンテナンスサイクルで考えた場合の最適な選択を私たちはご提案いたします。